まっ暗でも見えた!天王星の冷たいリング 
アルマの発見

まっ暗でも見えた!天王星の冷たいリング 

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わたしたちの太陽系にある遠いわく星、天王星(てんのうせい)-。そのまわりをかこむリングの画像がとらえられました。この画像は、南米チリにある2つの大きな望遠鏡、アルマ望遠鏡とヨーロッパ大型望遠鏡を使って作成されました。そして、今回はじめて、天王星のリングの温度がわかったのです。その温度は、およそマイナス200度でした。 

もしあなたのいる部屋がまっ暗だったら、何も見ることができませんね。わたしたち人間は、太陽や電気の光がモノにあたってはね返ることで、つくえやいすなどを見ることができます。でも、ヘビのように夜でも見える目をもっていたら、まっ暗でも見分けることができます。まっ暗でも見えるのは、すべての物体が温度をもっているから。すべての物体は、あらゆる温度で「人間の目には見えない光」つまり「赤外線(せきがいせん)」を出しています。 

ヨーロッパ大型望遠鏡は、まっ暗でも見える「暗視(あんし)カメラ」をもっています。たとえば、黒いちりの雲のように、宇宙をただよう暗い物体も見つけることができます。なぜなら、宇宙のちりは、太陽の光をはね返すのではなく、赤外線を出して自分で光っているからです。もし宇宙のちりがもっと冷たい温度だった場合には、赤外線よりも弱い電波「ミリ波」を出して光ります。このミリ波は、アルマ望遠鏡で見つけることができる電波です。 

天文学者たちは、アルマ望遠鏡とヨーロッパ大型望遠鏡を使って、天王星を調べました。その目的は、ミリ波と赤外線の電波を見て、天王星の冷たい大気のことをよく知るためです。すると、おどろきの発見がありました。天王星のまわりにある細いリングが、ミリ波と赤外線の電波を出して、明るく光っていたのです。特に、「イプシロンリング」とよばれる天王星のいちばん外側にあるリングは、とっても明るく見えました。 

研究チームは、リングの光の強さを調べることによって、リングの温度を計算することができました。その結果、天王星のリングは、とても冷たいことがわかりました。なんと、マイナス196度!これは、宇宙でもっとも冷たい温度とされる「絶対零度(ぜったいれいど)=マイナス273度」に近い温度です。わずか77度のちがいしかありません。 

さらに、この研究によって天王星のリングはとても「きれい」だということがわかりました。ちりのような小さなつぶは、ほとんどふくまれていませんでした。たとえば、天王星のイプシロンリングには、ゴルフボールと同じくらいの岩や氷しかありませんでした。土星や木星のリングとはまったくちがっています。土星や木星のリングには、細かいちりやほこりがたくさんふくまれています。天王星のリングがこんなにきれいな理由は、誰にもわかりません。 

将来、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使って、このなぞがとけるかもしれません。この宇宙望遠鏡は、2021年に打ち上げられる予定です。現在、地球を周回して宇宙を調べているハッブル宇宙望遠鏡よりも、はるかに大きいサイズです。それに、今回のヨーロッパ大型望遠鏡と同じように、赤外線を見ることができる高感度の「暗視カメラ」をそなえています。 

◎天王星って、どんな星? 

天王星は、太陽系で7番目のわく星です。太陽からだいたい30億キロメートルはなれていて、太陽のまわりを84年かけて1周します。1977年、天文学者は、天王星がたくさんの暗くて細いリングにかこまれていることを発見しました。9年後の1986年、NASAの宇宙船「ボイジャー2号」が初めて、天王星のリングのクローズアップ画像をさつえいしました。それ以来、ハッブル宇宙望遠鏡と地上にある望遠鏡を使って、この研究が進められています。 

◎だれが調べたの? 

天王星のリングの研究は、4人の天文学者たちによって行われました。アメリカのカリフォルニア大学のエドワード・モルターさんとインキ―・ド・ペーターさんは、ヨーロッパの超大型望遠鏡を使いました。いっぽう、イギリスにあるレスター大学のマイケル・ロマンさんとリー・フレッチャーさんは、アルマ望遠鏡を使って研究を行いました。 


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