新しいわく星の「とおり道」をさがせ! 
アルマの発見

新しいわく星の「とおり道」をさがせ! 

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アルマ望遠鏡は、遠くの赤ちゃん星「HD 169142」のまわりを回っている新しいわく星を見つけました。しかし、わく星そのものの写真をとったわけではありません。このわく星は、地球から見るには小さすぎたからです。アルマ望遠鏡は、この赤ちゃん星のまわりの円ばんをよく調べて、わく星の「とおり道」を見つけたのです。それは、雪のつもった地面に残された足あとから、とうめい人間を見つけるようなものです。 

赤ちゃん星の多くは、ちりやガスでできた平らな円ばんにかこまれています。このちりやガスがどんどん集まって、わく星が作られます。そのため、赤ちゃん星のまわりの円ばんは、「原始惑星系円ばん(げんしわくせいけいえんばん)」とよばれています。 

この円ばんの中で大きなわく星が生まれると、まんなかの星をぐるりと一周するような広いすき間が円ばんの中に作られます。これは、新しく生まれたわく星が、そうじ機のようにちりやガスをそうじしながら、中心の赤ちゃん星のまわりを回るからです。 

じっさい、赤ちゃん星「HD 169142」のまわりの円ばんにも、広いすき間ができていました。赤ちゃん星に近い内側の円ばんと、外側の円ばんの間に、からっぽのすき間があったのです。天文学者は、このすき間こそ、新しいわく星のとおり道にちがいないと考えています。 

さらに、アルマ望遠鏡はおどろくような発見をしました。なんと、外側の円ばんが、2本のほそいすき間で分けられていて、3本のリングになっていることがわかったのです。このリングのすき間はかなりせまいので、それぞれのすき間をわく星がとおったことで作られたものではなさそうです。では、この3本のリングはいったいどうやってできたのでしょう? 

天文学者たちは、その答えを知るために、スーパーコンピューターを使いました。新しいわく星がどのように成長していくのかをシミュレーションしたのです。すると、地球の10倍の重さをもつわく星がひとつだけあった場合に、このような3本のリングができることがわかりました。 

この外側の円ばんの中でわく星が生まれると、円ばんにすき間ができます。これだけなら、わく星のとおり道の内側と外側の2本のリングができるはずです。しかし、そのすき間のまんなか、わく星のとおり道のちょうどその上に、ちりが集まってくることがシミュレーションでわかりました。つまり、わく星のとおり道がすき間ではなく、リングになっているのです。そのため、わく星のとおり道と、その内側と、外側の3本のリングができあがったというわけです。 

おもしろいのは、3本のリングのうち、まんなかのリングがちょうどまんなかではなくて、少し内側によっていることです。まんなかのリングは、内側のリングから10億キロメートルのところ、外側のリングから18億キロメートルのところにあります。これは、わく星がゆっくりと内側に動いていることを意味しています。 

これからの研究によってこの説明がたしかめられたら、わたしたちの地球がある太陽系(たいようけい)のような「惑星系(わくせいけい)」がどのように生まれたのかを理解する手がかりになるでしょう。どうやら、赤ちゃん星の近くに大きなわく星があったとしても、小さめのわく星は、原始惑星円盤(げんしわくせいけいえんばん)の外側の部分に作られる可能性があるのです。 

◎「HD 169142」って、どんな星? 

遠くの赤ちゃん星「HD 169142」は、いて座の方向、地球から370光年はなれたところにあります。この星は、およそ600万歳、宇宙ではとてもわかい星です。太陽の1.7倍の重さがあります。この星が「原始惑星系円ばん(げんしわくせいけいえんばん)」にかこまれていることは、すでに知られていました。おそらく、この赤ちゃん星の近くにとても大きなわく星があることが原因で、円ばんに広いすき間が見られます。このすき間は、赤ちゃん星から約65億キロメートル(太陽からめい王星の間くらい)はなれたところにあります。今回のアルマ望遠鏡の観測によって、赤ちゃん星の外側の円ばんは、ちりでできた3本のリングになっていることがわかりました。3本のリングのはばは、数億キロメートル。おたがいに10〜20億キロメートルはなれています。 

◎だれが調べたの? 

アルマ望遠鏡による「HD 169142」の観測は、2017年9月~11月にかけて、天文学者たちの国際チームによって行われました。このチームは、南米チリにあるサンティアゴ大学のセバスチャン・ペレスさんがリーダーをつとました。セバスチャンさんは、同じ大学のサイモン・カササスさんとルーカス・シエザさん、フランスのクレメント・バルトーさん、カナダのルービン・ドンさん、アメリカのアントニオ・ヘレスさんたちと協力しました。この発見は、天文学の専門的な雑誌「アストロノミカル・ジャーナル」で2019年7月に発表されました。  


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