重い星と軽い星、同じように成長するの? 
アルマの発見

重い星と軽い星、同じように成長するの? 

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あなたが生まれたときの体重はどのくらいでしたか? 生まれたばかりの赤ちゃんの体重は、だいたい3000~4000グラムです。でも、みんな同じではありません。赤ちゃんによっては、もっと重かったり軽かったりします。それは、赤ちゃんが、お母さんのおなかの中でどれだけ成長したかにかかっています。 

赤ちゃん星も同じです。生まれたばかりの赤ちゃん星の重さはいろいろですが、太陽よりも軽いものがほとんどです。けれど、かなり重い星もあります。この重い星と軽い星は、同じように成長したのでしょうか? 

この質問に答えるために、天文学者たちはアルマ望遠鏡を使って巨大な赤ちゃん星を調べました。この星は「G353」として知られています。その重さは、すでに太陽の10倍もあります。じつは、まだ成長を続けていて、最終的にはさらに大きくなります。 

では、軽い赤ちゃん星はどのように成長するのでしょう?天文学者たちはすでに知っています。軽い赤ちゃん星は、最初の形ができはじめたころ、大きなガスの円盤(えんばん)に囲まれています。この円盤のガスは、赤ちゃん星の重力にすいよせられていきます。すると、星はさらに大きくなります。星の成長は、まわりの円盤にガスがなくなったとき、または、星から出る光がまわりの円盤のガスを宇宙にふき飛ばしてしまったときに止まります。 

いっぽう、重い赤ちゃん星はどのように成長するのでしょうか?これはだれも知りませんでした。巨大な赤ちゃん星は、とてもめずらしいのです。地球にいちばん近いものでさえ、数百光年はなれています。くわしく調べるには遠すぎます。 

しかし、アルマ望遠鏡のするどい視力と高い感度のおかげで、巨大な赤ちゃん星 G353 の研究が進みました。そして、巨大で重たい赤ちゃん星も、軽い赤ちゃん星と同じように成長することがわかってきたのです。たったひとつのちがいは、巨大な赤ちゃん星のまわりの円盤にはガスがずっとたくさんあるということです。 

巨大な赤ちゃん星 G353 の周りの円盤は、片方(かたほう)がもう片方よりも少し明るくなっていて、不安定なように見えます。この円盤は、将来的にたくさんの小さなかたまりになって、きっとばらばらになることでしょう。似たようなことは、軽い赤ちゃん星の円盤でも見つかっています。これは、重い星と軽い星が同じように成長することを示した別の例といえます。 

今回の結果は、すでにわかっていたことのように思えるかもしれません。しかし、重い星と軽い星で違いがあるのかどうか、誰も知らなかったことを思い出してください。それは科学においてとても大事なことです。たとえ何かを「真実だ」と思っていても、まずはそれを証明する必要があるのです。 

◎「G353」ってどんな星? 

巨大な赤ちゃん星「G353」は、実際には「G353.273 + 0.641」とよばれています。名前にある数字は、さそり座の方向にあることを示しています。この赤ちゃん星は、地球から5500光年はなれたところにあって、わずか3000年前に生まれました。幸いなことに、星の円盤は、地球から見てほぼ正面を向いていたので、アルマ望遠鏡は円盤で何が起こっているかをはっきり調べることができたのです。 

◎だれが調べたの? 

アルマ望遠鏡による巨大な赤ちゃん星「G353」の研究は、日本の天文学者たちのチームによって行われ、山口大学の元木業人(もとぎかずひと)さんがリーダーをつとめました。この研究の結果は、「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」で発表されました。


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