自分で吹き飛ばしたガスにかくれるブラックホール
アルマの発見

自分で吹き飛ばしたガスにかくれるブラックホール

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ほとんどの銀河の中心には、巨大なブラックホールがあります。ブラックホールは、ものすごい重力によってまわりのものを何でも吸い込んでしまいます。ガスやちりの雲、ときには星まで飲みこんでしまいます。ブラックホールのエサともいえるこうしたガスやちりは、吸いこまれる前は、ブラックホールのまわりを平らな円盤(えんばん)の形で回っています。

セサミストリートのクッキーモンスターのように、ブラックホールは食べ散らかしながらガスを飲みこみます。アルマ望遠鏡を使って観測すると、食べ散らかされたガスがブラックホールから吹き飛ばされているようすが発見されました。吹き飛ばされたガスはブラックホールのまわりにドーナツのようにたまっていっているようです。太いドーナツ型のガスの雲によって、そのうちこのブラックホールはかくされてしまうかもしれません。

これまでの観測で、巨大なブラックホールはたくさん見つかっています。そのほとんどは、このドーナツの形をしたガスの雲にかくされてしまっています。これまでは、ドーナツをつくっているガスは外側の銀河からブラックホールの重力に引かれて落ちてきたものだと考えられてきました。でもアルマによる観測で、実は中心にあるブラックホールの近くから吹き飛ばされてできたものだということがわかったのです。

アルマで観測したのは、銀河M77の中心にあるブラックホールと、そのまわりのガス雲です。アルマは、ガス雲の動きを調べることができます。この雲は、1秒間に400kmから800kmも進むというものすごいスピードで動いていました。こんなにスピードが速いと、ブラックホールに飲みこまれることはほとんどありません。ブラックホールに飲みこまれずにそのまわりにたまっていき、やがてドーナツ型の雲を作るのです。

M77の中心のブラックホールは、まるで車のエンジンのようです。ブラックホールの重力で引っ張ってきたガスやちりが燃料なら、噴き出したガスやちりはまるで排気ガスのようなものです。アルマを使った今後の観測で、どれくらいのガスが飲みこまれ、どれくらいのガスが外に噴き出しているかがわかることでしょう。さらに、たくさんのブラックホールのまわりにあるドーナツ型の雲が、ぜんぶ吹きだしたガスでできているのかどうかもわかることでしょう。

何を発見したのですか?

M77(NGC1068とも呼ばれます)は、大きなうずまき銀河です。私たちが住む天の川銀河の1.5倍くらいの大きさがあります。地球から見ると、くじら座の方向4700万光年のところにあります。この銀河の中心には、巨大なブラックホールがあります。その重さは、太陽の1500万倍もあります。しかし、ブラックホールはぶあついドーナツ型のガスとちりの雲におおわれているので、あまりくわしいことがわかっていません。

だれが発見したのですか?

アルマを使ったM77の観測は、アメリカのバックネル大学の天文学者、ジャック・ガリモアさんたちのグループが行ったものです。このグループには、アメリカやイギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、チリの研究者が参加しています。今回の発見は、アストロフィジカル・ジャーナル・レターズという専門的な雑誌で発表されました。


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