宇宙クラゲとしゃぼん玉

あなたはきっと「しゃぼん玉」のつくり方を知っていますね。まずは、丸い輪(わ)っかをせっけん水につけて、しずかにとりだします。すると、輪っかにうすいせっけんのまくがはります。輪っかを動かさなければ、何もおこりません。でも、あなたが輪っかをもって歩いたら、そのうしろにきれいなしゃぼん玉がつらなることでしょう。

その理由は、空気の圧力(あつりょく)です。空気中で輪っかだけを動かすのは、そんなにむずかしくありません。ただ、うすいせっけんのまくは空気にぶつかり、力をうけておし返されます。その結果、輪からせっけんのまくがおし出されてしゃぼん玉ができるのです。

天文学者たちは、遠くの銀河団で、しゃぼん玉と同じような宇宙の現象を研究していました。銀河がたくさん集まった集団を、銀河団とよびます。銀河団にある銀河と銀河のあいだは、とても高温のうすいガスでみたされています。これは、しゃぼん玉でいえば「空気」です。銀河のひとつが、銀河団のうすいガスの中をかなり速いスピードで移動しています。これを「輪っか」としましょう。すると、その銀河のうすいガス、つまり「せっけんのまく」がおしだされて、後ろにとりのこされます。天文学者たちは、このしくみを『動圧によるガスのはぎとり』とよんでいます。

この移動中の銀河は、「ESO 137-001」とよばれます。この銀河と宇宙のしゃぼん玉現象は、ハッブル宇宙望遠鏡によってくわしい画像がえられました。この写真では、銀河とガスが、うすい「しっぽ」をもった宇宙クラゲのように見えます。また、天文学者たちは、南米チリにあるヨーロッパの超大型望遠鏡を使って、クラゲ銀河のしっぽの部分にふくまれる高温の水素ガスのかがやきも見つけました。

現在、アルマ望遠鏡も、このクラゲ銀河について研究しています。そして、この銀河のガスの流れの中に、一酸化炭素の分子から出るサブミリ波を見つけました。画像では、オレンジ色であらわされています。このクラゲ銀河のように、『動圧によってガスがはぎとられた銀河』の中で冷たい分子ガスが発見されたのは初めてのことです。

この観測は、銀河の動き(しゃぼん玉の輪っか)と銀河団のうすいガス(空気)との関係について、科学者たちに多くの情報をもたらしました。また、クラゲ銀河のしっぽの部分でおこる原因不明のスターバースト(短いあいだにたくさんの星が作られる現象)についても、これから調べることができそうです。


◎「ESO 137-001」って、どんな銀河?

アルマ望遠鏡で観測したクラゲ銀河は、正式には「ESO 137-001」として知られています。この銀河は、じょうぎ座銀河団の一部です。南半球の「じょうぎ座」にちなんで名づけられ、地球からおよそ2億2000万光年はなれています。じょうぎ座銀河団には、何百もの銀河があります。そのひとつであるクラゲ銀河「ESO 137-001」は、時速700万kmの速さで銀河団の中心に向かって移動しています。この速い動きによってガスが銀河からおしだされ、25万光年の長いしっぽができたのです。

◎だれが調べたの?

アルマ望遠鏡によるクラゲ銀河の一酸化炭素の観測は、パベル・ヤーヒムさんたちが行いました。パベルさんは、チェコ共和国の首都プラハにあるチェコ科学アカデミーの天文学者です。パベルさんは、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ポルトガル、フランスの10人の天文学者とチームを組みました。この研究は、天文学の専門的な雑誌「アストロフィジカル・ジャーナル」で発表されました。

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