ブラックホールの重さをつきとめよう! 

ブラックホールの重さをつきとめよう! 

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ブラックホールの重さは、どうやってはかればいいのでしょう?人間の場合はかんたんです。体重計にのって、表示された数字を読むだけです。しかし、ブラックホールをのせられるような巨大な体重計はありません。たとえあったとしても、ブラックホールのすさまじい引力で、すぐにのみこまれてしまうでしょう。 

それにもかかわらず、天文学者たちは最近、遠くの銀河にあるブラックホールの重さを正しく測定しました。そのために使ったのは体重計ではなく、アルマ望遠鏡です。ブラックホールのまわりにある冷たいガス円ばんの回転速度を調べたのです。 

その原理は、天文学の分野ではよく知られています。たとえば、太陽をみてみましょう。太陽も体重計にのせることはできませんが、天文学者ならその重さをはかる方法を知っています。その方法は、わく星が太陽のまわりを公転する速度を測定することです。太陽にいちばん近いわく星である水星は、およそ毎秒48kmの速さで太陽のまわりを回っています。いっぽう、地球は毎秒30kmの速さで太陽のまわりを旅します。太陽から遠い海王星は、わずか毎秒5.5 kmの速さでゆっくりとめぐっていきます。 

このように、わく星の公転速度と太陽までの距離の両方がわかれば、太陽の重さを計算するのはかんたんです。ブラックホールをとりまくガスの円ばんでも同じことがいえます。円ばんは、ブラックホールから遠くはなれた重力の弱い場所よりも、ブラックホール近くの重力の強い場所のほうが速く回転します。 

アルマ望遠鏡は、南半球の空にある大きな楕円銀河(だえんぎんが)「NGC 3258」を調べました。この銀河の中心に巨大なブラックホールがあることは、これまでの観測からすでに知られていました。アルマ望遠鏡は、そのすばらしい視力(しりょく)のおかげで、ブラックホールをとりまく冷たいガスの回転円ばんを見分けることができました。さらに、円ばんの中の一酸化炭素ガスが出す電波「ミリ波」を調べることで、ブラックホールの近くから遠い距離まで、さまざまな場所の回転速度を測定することができたのです。 

天文学者たちは、この観測からブラックホールの重さを計算しました。すると、この銀河の中心にあるブラックホールは、太陽の22億5000万倍というびっくりするほどの重さであることがわかりました。これは、アルマ望遠鏡がこれまで調べた中で、もっとも重いブラックホールです。 

楕円銀河のおよそ10分の1は、その中心に回転するガスの円ばんをかかえています。そのため、天文学者たちは同じ方法を使って、ほかの銀河にあるもっとたくさんのブラックホールの重さを測定したいと考えています。 

◎「NGC 3258」って、どんな銀河? 

アルマ望遠鏡で調べた大きな楕円銀河は、「NGC 3258」として知られています。南半球の空のポンプ座の方向にあり、地球から少なくとも1億光年はなれています。この銀河は、1834年に天文学者のジョン・ハーシェルさんによって発見されました。ジョンさんは南アフリカから南半球の星空を研究していました。すべての楕円銀河と同じように「NGC 3258」の中心にも超大質量ブラックホールがあります。このブラックホールは、冷たい分子ガスの回転円ばんにかこまれています。アルマ望遠鏡で調べたところ、ブラックホールから500光年はなれた円ばんの外側部分は、およそ時速100万kmの速さで回転していることがわかりました。いっぽう、ブラックホールからわずか65光年の距離にある円ばんの内側は、時速300万kmをはるかにこえる速さで回転していました。それらの測定結果から、このブラックホールは、太陽の約22億5000万倍の質量でなければならないことがわかったのです。 

◎だれが調べたの? 

この研究は、アメリカのテキサスA&M(エー・アンド・エム)大学のベンジャミン・ボイゼルさんがリーダーをつとめる天文学者のチームによって行われました。ベンジャミンさんは、同じアメリカの研究者であるアーロン・バースさん、ジョネル・ウォルシュさん、デビッド・ビオテさん、アンドリュー・ベイカーさん、ジェレミー・ダーリングさん、そして、中国・北京(ぺきん)大学のルイス・ホーさんといっしょに研究を行いました。この結果は、天文学の専門的な雑誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に発表されました。

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