重たい星を生み出す2羽のくじゃく雲

この2つの画像は、美しい色をした「くじゃく」に見えませんか?

じつは、この画像は、おとなりの銀河にある巨大なガスの雲です。くじゃくの羽のように見えるのは、ひものように長くのびたガス雲です。アルマ望遠鏡でくわしく調べてみると、2つの雲のおく深くでは、ガスが集まってギュッとちぢまり、とても重たい星たちが生まれているところでした。

それほど重くない太陽のような星は、冷たいガスやちりの巨大な雲の中から生まれます。しかし、今回のようにとても重たい星がどうやって生まれるのか、くわしいことはわかっていません。太陽の10倍の重さの星が生まれるには、小さな空間にたくさんのガスを集めて、ギュッと圧縮(あっしゅく)しなければなりません。でも、それは現実的ではありません。なぜなら、ガスは集まると熱くなって、ふくらんでしまうからです。

2つのくじゃく雲は、この問題を解決するヒントになりました。羽のように見える「ひも」の存在は、雲がよくかきまぜられていることを示しています。くじゃく雲の一部では、ガスがはげしくかきまぜられていて、とても「密(みつ)」な状態になりました。それは、とても重たい星が生まれるのに十分な密度(みつど)でした。

では、この雲をかきまぜている原因は何なのでしょう? それは、2つの小さな銀河が近づきすぎたことによるものだと天文学者たちは考えています。2つの小さな銀河(大マゼラン雲と小マゼラン雲)は、南半球では夜空にかすんだ雲のように見えます。

2つのくじゃく雲は、大マゼラン雲の中にあります。大マゼラン雲と小マゼラン雲は、現在かなりはなれたところにあります。しかし、およそ2億年前、この大小のマゼラン雲は近いところをすれちがいました。

このすれちがいのあいだに、小マゼラン雲にあったガスが大マゼラン雲に流れこみました。そして、大マゼラン雲にもともとあったガスとぶつかりました。この衝突(しょうとつ)が、ガスをはげしくかきまぜ、とても重たい星が生まれる原因を作ったのです。

こうして、アルマ望遠鏡の観測は、銀河どうしの動きと、重たい星の誕生(たんじょう)のつながりを明らかにしたのです。

さいごに、この画像の美しい「くじゃく色」はどうでしたか? 残念ながら、目で見てもこの色には見えません。ガスの成分や速度のちがいによって色を変えて表現しています。


◎2羽のくじゃく雲は、どこにある?

アルマ望遠鏡によって画像化された2つのくじゃく雲は、「N159」とよばれる巨大な星たちが作られる場所にあります。「N159」は、地球からおよそ16万7千光年はなれた大マゼラン雲の中にあります。左側の雲は「N159E」(パピヨン星雲)とよばれています。右側の雲は「N159W」として知られています。この2つの雲は、およそ150光年はなれています。それでも、とてもよく似た構造をしていて、どちらも同い年の巨大な赤ちゃん星たちをかかえています。そのため、天文学者たちは、2億年前の大マゼラン雲と小マゼラン雲が近いところをすれちがったことで、このふたつの雲ができたのだろうと考えています。

◎だれが調べたの?

アルマ望遠鏡による2つのくじゃく雲の観測は、天文学者による大きな国際チームによって行われました。名古屋大学の福井 康雄(ふくい やすお)さんと大阪府立大学の徳田 一起(とくだ かずき)さんがリーダーをつとめました。福井さんと徳田さんは、日本、アメリカ、フランス、ドイツの天文学者たちと協力しました。この研究結果は、2つの論文(それぞれの「くじゃく雲」に関する論文)として「アストロフィジカル・ジャーナル」に発表されました。

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