生命のもとになるリンはどこからきたの?

おかしを作るには、小麦粉やバター、砂糖、卵など、いろいろな材料が必要です。材料がなければおかしを作ることはできません。同じように、地球に最初の生命が生まれたときも、そのための材料が必要でした。生命の材料である炭素や酸素は、宇宙ですぐに見つかります。でも、そのほかの材料がどこから来ているのか、はっきりしたことはわかっていません。その材料のひとつがリンです。

リンは、すべての生物がもっているDNAの大事な成分です。わたしたちの体のすべての細胞には無数のDNA分子が含まれていて、そのDNAすべてにリンが含まれています。では、リンはどこから来たのでしょう?そして、リンはどのようにして地球に届いたのでしょうか?

今回、アルマ望遠鏡とヨーロッパの宇宙探査機ロゼッタの観測によって、その答えが見つかりはじめています。ある意味、天文学者たちは、わたしたちの体の中にあるリンの歴史をたどっているようなものですね。

リンは、巨大な星の内部でおこる核融合(かくゆうごう)によって作られます。巨大な星々が一生を終えるときには、星に含まれていたガスがふきだし、やがて大爆発(ばくはつ)をおこします。すると、リン原子が宇宙にふき飛ばされるのです。アルマ望遠鏡は、酸素とリンが組み合わさった「一酸化リン」が宇宙にあることを発見しました。

アルマ望遠鏡の観測によると、一酸化リンは、巨大な赤ちゃん星から出る強力な光や衝撃波(しょうげきは)の影響をうけて作られます。巨大な星は、まわりをとりまくガスやちりの雲をふき飛ばし、空洞(くうどう)を作ります。一酸化リンは、この空洞の内側で作られるのです。

リンを含むものとしては「一酸化リン」が宇宙で最もたくさんあることもアルマ望遠鏡でわかりました。では、いったいどうやってリンは地球にたどりついたのでしょうか?そこで、ヨーロッパの宇宙探査機ロゼッタの出番です。ロゼッタは、太陽系内の彗星(すいせい)をくわしく調べました。

彗星は惑星の材料のひとつで、氷と岩石が固まったものです。宇宙探査機ロゼッタは、「チュリュモフ・ゲラメンコ彗星」からふきだしているガスの中に、一酸化リンが含まれていることを発見しました。どうやらこの一酸化リンは、太陽が生まれたとき、赤ちゃん太陽のまわりをとりかこむ円ばんの外側で、氷のかたまりに閉じ込められたようです。

つまり、一酸化リンの物語は次のようなものです。巨大な星が一生を終えるときに、星の中で作られたリンが宇宙空間にまきちらされます。まきちらされたリンは、巨大な赤ちゃん星の近くにたどり着き、酸素とくっついて一酸化リンが作られます。一酸化リンは、太陽のような星を生み出すガスやちりの雲の一部にまぎれこみます。ガスやちりの雲から生まれる星は、回転する平らな円ばんにかこまれています。その円ばんの外側のあたりで、一酸化リンは氷に閉じこめられて、彗星のもとになったのです。

赤ちゃん星のまわりの円ばんの中では、惑星(わくせい)が作られます。円ばんの外側で作られた彗星が生まれたばかりの惑星にぶつかると、その惑星にリンが届けられるのです。その惑星は、地球だったかもしれません。リンはその場所で、あなたやわたしのような生命の材料になるのです。


◎リンはどこからきたの?

アルマ望遠鏡は、「AFGL5142」とよばれる星雲内でリンを含む分子の分布を調べました。ガスやちりが集まったこの巨大な雲の中で、新しい巨大な星々が作られています。アルマ望遠鏡は、リンを含む分子を2種類発見しました。一酸化リン(PO)とちっ化リン(PN)です。 一酸化リンは、ちっ化リンよりたくさん宇宙にあることがわかりました。ヨーロッパの宇宙探査機ロゼッタは、2人の発見者にちなんで名づけられた「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」を訪れ、観測装置ロジーナを使って彗星の成分を調べました。すると、この彗星にも一酸化リンが含まれていることがわかりました。もし同じことが他の彗星にあてはまるなら、生命の材料のひとつであるリンを地球に運んできたのは、彗星なのかもしれません。

◎だれが調べたの?

宇宙や彗星の中に含まれるリン分子の研究は、イタリアにあるアルチェトリ天体物理観測所のビクター・リヴィラさん、スイスにあるベルン大学のカトリン・アルウェグさんがリーダーをつとめる大きな国際チームによって行われました。ビクターさんとカトリンさんは、ヨーロッパ国内の11人の天文学者や宇宙探査機ロゼッタの観測装置ロジーナを運用した科学者のチームと協力しました。この研究チームは、イギリスの王立天文学会にこの結果を発表しました。

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