ブラックホールのまわりでガスのふしぎな回転を発見

おうちでできるかんたんな実験があります。まずは、キッチンの流しに水をはります。つぎに、せんをぬいて、水が排水口(はいすいこう)に流れていくようすを観察してみましょう。何か気がつきましたか? 流しにたまった水は、排水口に向かって一直線に落ちていきません。代わりに、水はうずをまいて回転しながら排水口の中に消えていきます。

ほかにも気がつくかもしれません。水は、時計まわり・反時計まわりのどちらの方向に回転していたとしても、同じ方向にうずをまいて流れるものです。たとえば、排水口に近い水は時計まわりに回転して、排水口から遠い水は反時計まわりに回転するなんてことはないはずです。もしそんなことが起きたら…変ですよね!?

これはまさに銀河の中心で天文学者が目にしていることでした。うずまき銀河「M77」の中心には宇宙の「排水口」があります。それは、超巨大ブラックホールです。ブラックホールの近くにあるガスの雲は、強い重力に引きよせられてブラックホールに落ちていきます。キッチンの水と同じように、ガスが一直線に落ちていくことはありません。代わりに、まずはブラックホールのまわりを回転する「降着(こうちゃく)円ばん」にたまります。

ここまではいいですね。ただ、アルマ望遠鏡の最新の観測は、なぞの現象をとらえました!ブラックホールをかこむ円ばんの内側は決まった方向に回転していますが、円ばんの外側は反対方向に動いていたのです。こんな現象は今まで見つかったことがありません。

天文学者たちは、円ばんのガスの動きが何らかの方法でじゃまされたにちがいないと考えています。もしかしたら、過去にうずまき銀河「M77」が小さな銀河をのみこんだからかもしれません。そのような影響(えいきょう)がないかぎり、同じ円ばんの内側と外側が反対方向に回転するなんてありえないのです。

この発見は、別のなぞの解明に役立つ可能性があります。天文学者は、宇宙がはじまって間もないころに超巨大ブラックホールがすでに存在(そんざい)していたことを発見しました。このブラックホールが「どのように急成長したのか」はよくわかっていません。それは、ビンの中でかっていたおたまじゃくしが、2日後に急にカエルになっているようなものです。

しかし、うずまき銀河「M77」のように、ブラックホールのまわりの円ばんが予想外の方向に回転すると、円ばんは長いあいだ安定した状態ではいられません。その結果、短い時間で、はるかに多くのガスがブラックホールに落ちていきます。おそらく、宇宙がはじまって間もないころのブラックホールが急成長をとげたのは、これが理由なのかもしれません!
 


◎ M77って、どんな銀河?

M77(別名NGC1068)は、くじら座にある大きなうずまき銀河です。この銀河は1780年にフランスの天文学者ピエール・メシャンさんによって発見されました。地球からおよそ4700万光年はなれた場所にあります。この銀河の中心には、太陽の1700万倍も重いブラックホールがあります。アルマ望遠鏡による過去の観測によって、星の材料となる「ガス」が高速でブラックホールに落ちていることがすでにわかっています。アルマ望遠鏡は、今回、ブラックホールのまわりの降着(こうちゃく)円ばんにふくまれる冷たい分子ガスを調べました。この円ばんの内側(ブラックホールから4光年以内)は銀河と同じ方向に回転していますが、円ばんの外側(ブラックホールから22光年以内)は反対方向に回転しています。

◎だれが調べたの?

うずまき銀河「M77」の中心にあるブラックホール周辺の降着(こうちゃく)円ばんの観測は、天文学者たちの国際チームによって行われました。このチームは、チリの首都サンティアゴにある合同アルマ観測所のヴィオレット・インペリッツェリさんがリーダーをつとめました。ヴィオレットさんは、チリ、アメリカ、カナダ、ドイツ、イギリス、イタリアの10人のなかまたちと協力しました。この研究の結果は、天文学の専門雑誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に発表されました。

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