ブラックホールは銀河のエアコン!?

「サーモスタット」という機械のことを知っていますか?サーモスタットは、温度の調整をするはたらきをもっています。部屋が冷えすぎたら、サーモスタットは暖房のスイッチを入れます。熱くなりすぎたら、暖房を止めます。宇宙にある銀河にもサーモスタットのようなものがあることが、アルマ望遠鏡の観測でわかりました。

銀河の中にただようガスは、とても冷たくなるとぎゅーっとつぶれていき、そこから新しい星が生まれます。逆に、温度が高いガスはつぶれることができないので、星が生まれません。

では、銀河の中のガスは、どのように温められるのでしょうか?ひとつの方法は、巨大なブラックホールです。ブラックホールはまわりにあるガスをどんどん飲み込んでいきます。このとき、上下方向にガスをはげしくふきだします。これをジェットと呼びますが、それはまるで公園にある噴水のようなものです。このジェットは、銀河の外側にあるガスとぶつかって、ガスを温めます。このガスは、泡のように銀河の両側にうかびます。

アルマを使って銀河をくわしく調べたところ、温かいガスの泡の表面にそって冷たいガスが広がっていることがわかりました。ジェットが冷たいガスを集めている、といってもいいかもしれません。将来的には、冷たいガスは銀河に落ちていき、そこで新たな星を作る材料になります。冷たいガスの一部は中心にあるブラックホールの燃料となり、この「加熱装置」が止まってしまわないという仕組みになっています。

こうして考えると、ブラックホールとそのジェットは巨大なサーモスタットのはたらきをしているといえます。ジェットが冷たいガスを集めて銀河に戻してくれるため、銀河は新たな星が生み出せなくなるほど熱くなることはありません。一方で、冷たいガスがブラックホールのエネルギー源となり、その結果として生み出されるジェットは銀河の外側部分にあるガスを温めているため、星が生まれる勢いが強くなりすぎることもありません。

天文学者たちは、超巨大ブラックホールを持つ他の銀河にも同じような「サーモスタット」があると考えています。アルマ望遠鏡を使った新たな観測は、このような活動銀河の仕組みを理解するのに役立っているのです。


なにを?

アルマ望遠鏡を使って、南天のほうおう座にある「ほうおう座銀河団」(地球から57億光年の距離にある数千の銀河の巨大な集団)の中心にある銀河が観測されました。この銀河の中心にあるブラックホールから噴き出すふたつのジェットは、銀河の外側で高温ガスの泡を作り出しています。アルマ望遠鏡では、この泡の側面にそってのびる冷たいガスが発するミリ波の電波を検出しました。冷たいガスは中心から約8万光年の距離にまで広がっており、私達の太陽のような星を何十億個も生み出すのに十分な量があります。

だれが?

アルマ望遠鏡を使った「ほうおう座銀河団」の中心の銀河の観測は、2014年6月にイギリス・ケンブリッジ大学のヘレン・ラッセルさんたちのチームによって行われました。ヘレンさんのチームは、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリアの天文学者がメンバーです。この発見は、天文学の専門的な雑誌 「アストロフィジカル・ジャーナル」 に掲載されました。

ALMAサイトでこれをチェックしてください